結論:職歴を残し、現役・離職後で制度を切り替える

現在、石綿等の取扱いに常時従事する労働者には、雇入れ時または配置換え時、その後6か月以内ごとに1回、石綿健康診断が必要です。事業者は結果を記録し、異常所見があれば医師の意見に基づく措置を検討します。

離職時または離職後は、健康管理手帳の交付要件に該当すれば、住所地の都道府県労働局長へ申請できます。交付後は指定医療機関で原則年2回、定められた健診を無料で受けられます。会社から自動的に送られるとは限らないため本人が確認します。

健診は疾病を必ず予防・早期発見する保証ではありませんが、長期的な健康管理と過去画像の比較に役立ちます。せき、息切れ、胸痛などの症状がある場合は健診時期を待たず医療機関へ相談します。

就業中から離職後までの健康管理
  1. 作業開始特別教育、保護具、作業・ばく露記録
  2. 就業中配置時・定期の石綿健康診断
  3. 離職前職歴・健診・作業記録の写しを整理
  4. 手帳申請住所地の都道府県労働局へ要件確認
  5. 離職後指定健診と症状時の医療相談を継続

石綿健康診断の対象と時期

石綿等の取扱いに常時従事する労働者に対し、事業者は雇入れ時または当該業務への配置換え時、その後6か月以内ごとに1回、定期に医師による石綿健康診断を行います。過去に常時従事させたことがあり、現在も使用する労働者についても法令上の対象を確認します。

一次健診の項目には業務歴、せき・たん・息切れ・胸痛等の自覚・他覚症状、胸部X線等があります。医師が必要と認める場合は、作業条件、既往歴、喫煙歴等を踏まえて追加検査が検討されます。

一般健康診断を受けているから石綿健康診断も済んでいるとは限りません。健診機関への申込み、対象者名簿、業務歴、結果票、医師意見、就業上の措置を安全衛生担当が管理します。

就業中の石綿健康診断

就業中の石綿健康診断
時期対象確認
雇入れ・配置換え石綿等の取扱いに常時従事する者業務開始前後の基準画像・業務歴
6か月以内ごと対象業務へ継続従事する者症状、胸部X線、医師意見
過去従事者法令上の対象となる在職労働者過去業務と現在雇用の関係
症状時対象を問わず医療相談が必要な人定期日を待たず受診

健康管理手帳を申請できる人

健康管理手帳は、離職の際または離職後に申請し、審査を経て交付されます。石綿業務では、両肺野の石綿による不整形陰影または石綿による胸膜肥厚がある方は、直接業務または周辺業務で要件となり得ます。

画像所見とは別に、石綿製造、保温材・耐火被覆材等の張付け・補修・除去、吹付け、吹付け材がある建築物・工作物等の解体・破砕等へ1年以上従事し、初めて石綿粉じんへばく露した日から10年以上経過している方も要件となり得ます。

上記以外の石綿を取り扱う作業は10年以上の従事歴が要件となり得ます。二種類の作業歴を合算する特例もあります。周辺業務は画像所見による要件の扱いなど直接業務と異なるため、自己計算だけで判断せず労働局へ確認します。

石綿健康管理手帳の主な交付要件

石綿健康管理手帳の主な交付要件
要件対象業務主な条件
画像所見直接業務・周辺業務石綿による不整形陰影または胸膜肥厚
高リスク作業歴製造、吹付け、保温材等、吹付け建物解体1年以上かつ初回ばく露から10年以上
その他取扱作業歴上記以外の直接業務10年以上
組合せ高リスク作業とその他作業所定の換算で合算可能

要件の詳細・必要資料は申請時点の厚生労働省資料と住所地の都道府県労働局で確認してください。

直接業務と周辺業務を区別して職歴を書く

直接業務は石綿製品を製造・取り扱う作業、周辺業務は直接業務に伴い石綿粉じんが発散する作業場で行う直接業務以外の仕事です。平成21年4月から周辺業務も一定の健康管理手帳対象へ追加されました。

清掃、運搬、監督、設備保全、事務等でも、実際に石綿粉じんが発散する作業場に常時立ち入ったかを具体的に書きます。職種名だけでなく、同じ室内で誰が何をし、粉じん・換気・保護具がどうだったかを記録します。

建設業の多重下請では勤務先と現場元請が異なります。会社名、元請、現場名、所在地、建物用途、工期、作業、材料、同僚を可能な範囲で分けます。

職歴記録の書き分け

職歴記録の書き分け
区分記録すること
直接業務石綿材料へ直接行った操作吹付け、切断、保温、除去、解体
周辺業務同じ作業場での役割と粉じん状況清掃、運搬、監督、設備保守
現場元請、所在地、建物、期間造船所、工場、学校、ビル
防護換気、湿潤、マスク、作業衣型式不明なら形状・使用頻度

会社がなくても職歴資料を集める

年金加入記録、雇用保険、源泉徴収票、給与明細、退職証明、社員証、安全手帳、資格証、健康診断票、作業写真、日記、工事契約・名簿などを探します。勤務先の商号変更・合併・廃業も時系列にします。

同僚や元請担当者へ、同じ期間・現場・作業を知る人がいないか確認します。証明書を依頼する場合は、推測を混ぜず本人が見聞きした事実を書いてもらいます。

資料が少ないことだけで相談を諦めません。住所地の都道府県労働局へ、残っている資料と記憶を持参し、追加で必要な証明を確認します。申請書を完成させてから初めて相談するより早く進められます。

職歴を再構成する5つの手掛かり
  1. 公的記録年金・雇用保険・税・住民票
  2. 会社資料給与・社員証・退職・健康診断
  3. 現場資料安全手帳・資格・名簿・写真
  4. 人の記憶同僚・元請・家族の具体的証言
  5. 本人年表確実・概算・不明を区別して統合

申請時にそろえる資料と窓口

健康管理手帳の申請先は、離職の際または離職後の住所地を管轄する都道府県労働局です。申請書、業務従事歴を示す資料、健康診断・画像所見等、要件に応じた書類を確認します。

じん肺管理区分2または3の決定を受けている場合は、粉じん作業に関する健康管理手帳も関係する可能性があります。石綿の手帳だけに限定せず、労働局へ該当制度を確認します。

交付後は指定医療機関と健診時期を確認し、手帳、過去画像、職歴、症状の変化、他院受診を医師へ伝えます。住所変更、手帳紛失等は所定の手続きを行います。

申請準備のチェック

申請準備のチェック
資料目的入手先
申請・経歴書業務、期間、直接・周辺を説明都道府県労働局
雇用・現場資料勤務先と作業を裏付け本人、会社、公的記録
健診・画像画像所見等の要件を確認健診機関・医療機関
本人確認等住所・離職・申請者を確認自治体・会社

症状がある場合は定期健診を待たない

せき、たん、息切れ、胸痛、体重減少等には多くの原因があります。石綿ばく露歴があるから中皮腫と自己診断せず、症状が続く・悪化する場合は医療機関へ相談し、いつからどの作業へ従事したかを伝えます。

急な呼吸困難、強い胸痛など緊急性がある症状は救急医療を利用します。健康管理手帳の申請や次回健診を待つ必要はありません。

診断された場合は、仕事が原因となる可能性を主治医へ伝え、労働基準監督署の労災相談、労災で補償されない場合の石綿健康被害救済制度を確認します。制度の窓口は診療の代わりではありません。

  • 症状の開始・変化・受診歴を日付で記録する
  • 職歴年表と過去の胸部画像・健診結果を医師へ見せる
  • 緊急症状は手帳・制度手続きより救急受診を優先する
  • 診断後は労災と救済制度の両方の可能性を相談する
  • 家族が資料の所在と相談窓口を共有する

事業者が離職者へ引き渡す情報

事業者は、労働者ごとに石綿作業へ従事した期間、作業内容、保護具の使用状況等を記録し、原則40年間保存します。離職時に本人が業務歴を確認できるよう、会社の窓口、健診結果、対象作業、現場情報を整理します。

会社の記録義務と本人の健康管理手帳は別ですが、記録が申請・診療・労災の重要な手掛かりになります。下請・応援・短期雇用者も氏名と作業を漏らさず記録します。

会社が合併・廃業する可能性も考え、法定保存だけでなく、記録媒体、バックアップ、管理責任者、照会方法を決めます。個人情報を守りながら、数十年後に検索できる索引を残します。

長期保存する作業者記録

長期保存する作業者記録
項目具体例将来の利用
従事者氏名、生年月日、雇用、所属本人特定・照会
期間・作業現場、日付、建材、工法、周辺作業ばく露歴・手帳・労災
保護措置呼吸用保護具、保護衣、隔離、湿潤作業条件の評価
健康管理健診日、結果、医師意見、措置長期比較・就業配慮

目的別に相談先を使い分ける

健康診断の対象・事業者義務は最寄りの労働基準監督署、健康管理手帳は住所地の都道府県労働局、症状・診断は医療機関、労災は労働基準監督署、救済制度は環境再生保全機構・保健所等へ相談します。

相談時は、氏名、年齢、現在の雇用、勤務先・作業・期間、初回ばく露のおおよその年、健診・画像、症状、既に申請した制度を簡潔にまとめます。同じ説明を繰り返さずに済みます。

制度は改正されるため、古い会社資料やブログだけで対象外と判断しません。厚生労働省・ERCAの公式ページを確認し、電話相談の日時・担当・回答・次の行動を記録します。

相談先の整理

相談先の整理
相談内容窓口持参するもの
石綿健康診断事業者・労働基準監督署現在の作業・雇用・健診歴
健康管理手帳住所地の都道府県労働局職歴・雇用・現場・画像資料
症状・診断医療機関症状経過・職歴・過去画像
労災・救済労基署/ERCA・保健所診断・職歴・申請状況