代表的な石綿含有建材と使用部位

建材は「アスベスト材」という一つの外観を持ちません。繊維を多く含む吹付け材、熱を遮る保温材・断熱材、鉄骨を守る耐火被覆材、セメント等で固めた成形板、薄い床接着剤・下地調整材まで、用途と形状が大きく異なります。

調査では建材名だけでなく、建物のどこで、どの層として、どの年代に施工されたかを記録します。「天井」の一語では、天井板、吸音材、接着剤、天井裏の吹付け材、梁の耐火被覆を区別できません。

代表的な石綿含有建材と使用部位:比較・確認表

代表的な石綿含有建材と使用部位:比較・確認表
区分代表例主な使用部位外観上の手掛かり
吹付け材吹付け石綿、石綿含有吹付けロックウール鉄骨梁・柱、機械室、天井、壁灰色・白色等の粗い吹付け面。母材形状に沿って密着
保温材・断熱材・耐火被覆材配管保温材、煙突断熱材、耐火被覆板ボイラー、配管、ダクト、煙突、鉄骨布巻き、筒状、板状、塗り材など多様
成形板等スレート、けい酸カルシウム板、窯業系外壁材屋根、外壁、軒天、天井、壁、床下地比較的硬い板状。非含有品と外観が似る
床・接着関連ビニル床タイル、床シート、接着剤店舗、学校、事務所、住宅タイル状・シート状。裏側や接着剤も確認
塗材・下地材仕上塗材、下地調整材、パテ外壁、内壁、天井薄い層で複数回改修されていることがある

吹付け材は白い綿状とは限らない

石綿含有吹付けロックウール等は、灰色から灰褐色で、細かな団粒と短い繊維が絡んだ粗面として見えることがあります。天井スラブ、デッキプレート、梁のフランジやウェブに直接密着し、母材の凹凸に沿って不均一な厚さで施工される例があります。表面塗装や経年汚れで色が変わることもあります。

一方、色、粗さ、毛羽立ちだけで石綿含有を断定できません。非含有ロックウール、セルロース系吹付け材、他の耐火・吸音材も似た外観を示します。写真は吹付け材らしい範囲を把握する手掛かりにはなりますが、含有判定は製品資料・施工年代・現物確認・必要な分析で行います。

吹付け材が劣化・剥離していても、所有者が自分で触って繊維を確かめてはいけません。立入・気流・振動による影響を抑え、専門家が状態、居室への露出、工事予定を確認します。

古い建物の天井スラブと梁に密着した灰色の粗い吹付け材
吹付け材の例。外観が似る非含有材もあるため、書面・現物・必要な分析で判定します。

レベル1・2・3は危険度ランキングではない

レベル1・2・3は、発じん性の違いを説明し、工事対策を整理するため広く使われる通称です。法令上の建材名称や作業方法が必要措置を決めるため、「レベル3だから安全」「レベル1なら建物にいるだけで直ちに危険」という単純な順位ではありません。

同じ成形板でも、原形のまま手で取り外す作業と、高速工具で切断・研磨する作業では粉じん発生が異なります。保温材・耐火被覆材も劣化状態、除去範囲、隔離条件で計画が変わります。建材区分、状態、工法、周辺条件の四つで対策を決めます。

通称レベルだけで工法・保護具を決めず、法令上の建材区分と実際の作業条件を確認します。

通称レベルだけで工法・保護具を決めず、法令上の建材区分と実際の作業条件を確認します。
通称主な建材一般的な特徴工事計画のポイント
レベル1石綿含有吹付け材著しく発じんしやすい隔離・負圧等を含む厳格な措置
レベル2保温材、耐火被覆材、断熱材密度が低く崩れやすいものがある建材・除去方法に応じた隔離等
レベル3成形板、仕上塗材等石綿が比較的固定されている原形撤去、湿潤化、破断抑制等

建物の部位から候補建材を洗い出す

部屋を一周して見える表面だけでは、工事対象を網羅できません。施工者の作業手順を使い、取り外す順序で表面、基材、固定・調整材、隠蔽部、設備材を確認します。外壁改修なら仕上塗材だけでなく下地調整材、シーリング、外壁板、固定部も対象候補です。

設備工事では、配管・ダクトの保温材、フランジ部のガスケット、貫通部の耐火材、機械室の吹付け材を確認します。機器搬出のため壁や扉枠を加工するなら搬出経路も調査範囲です。

部位別の主な確認対象
  1. 天井・梁吹付け材、耐火被覆、天井板、吸音板、接着剤
  2. 壁・外壁ボード、外壁板、仕上塗材、下地調整材、シーリング
  3. 床タイル、床シート、接着剤、下地材
  4. 屋根・軒天スレート、屋根材、軒天板、下葺き材
  5. 設備配管保温材、ダクト、パッキン、煙突断熱材
  6. 隠蔽部天井裏、二重壁、シャフト、増築接続部

石綿は6種類、規制基準は0.1重量%超

日本の法令で対象となる石綿は、クリソタイル、アモサイト、クロシドライト、トレモライト、アクチノライト、アンソフィライトの6種類です。現在は、石綿を重量の0.1%を超えて含有する製剤その他の物が規制対象です。古い資料が3種類のみを対象としていた時期もあるため、過去の分析結果を再利用する際は対象石綿と方法を確認します。

製品名や用途から使用例の多い種類を推測できる場合はありますが、現場で石綿の種類を外観識別することはできません。0.1%は肉眼で繊維が見えるかどうかの基準でもありません。切断・研磨・破砕前に、書面・目視・必要な分析で建材ごとに判定します。

古い分析で非含有とされていても、試料が今回の部位・層を代表するか、6種類を対象にしたか、増改築後の材料を含むかを確認します。分析証明の建物名だけで建物全体へ適用しません。

用途は典型例であり、個別製品の含有を断定する表ではありません。

用途は典型例であり、個別製品の含有を断定する表ではありません。
石綿の種類別名・表記例過去資料を見る際の注意
クリソタイル白石綿幅広い建材で使用例
アモサイト茶石綿吹付け・保温材等の資料で確認
クロシドライト青石綿吹付け・配管材等の資料で確認
トレモライト不純物として検出される場合もある
アクチノライト旧分析で対象外だった可能性を確認
アンソフィライト旧分析で対象外だった可能性を確認

平常時の状態と工事時の飛散条件を分ける

硬い成形板が健全な状態で使われているときと、それを切断・破砕するときでは粉じん発生の条件が異なります。反対に、吹付け材や保温材が劣化・損傷し、空調気流や振動の影響を受ける場所では、工事をしていなくても維持管理上の評価が必要になる場合があります。

建物所有者は、含有の有無だけでなく、建材の状態、居室への露出、損傷原因、気流、点検履歴、今後の工事予定を記録します。損傷が進行している場合は、立入や接触を制限し、専門家が補修・囲い込み・封じ込め・除去等の選択を検討します。

工事時は、含有建材の種類と作業方法に応じ、原形撤去、湿潤化、隔離、集じん・排気、立入管理、清掃、保護具、廃棄物管理を計画します。呼吸用保護具は建材レベル名だけで一律に決めず、発じんの程度と作業条件に適合する選定・装着管理が必要です。

判断に必要な4つの軸
  1. 含有判定含有・非含有・みなし・未調査を区別
  2. 建材の状態健全・劣化・剥離・損傷を記録
  3. 作業方法穴あけ・切断・研磨・撤去の有無
  4. 周辺条件居室、気流、第三者、隣接区画への影響

複層建材は表面と下地を分けて判定する

壁・床・外壁は一つの材料に見えても、表面仕上げ、基材、接着剤、下地調整材、パテ等の複数層で構成されます。例えば床タイルが非含有でも接着剤が未確認なら、接着剤を削る工事まで非含有とはいえません。外壁仕上塗材と下地調整材も別の施工年代・製品である場合があります。

調査報告書では、部屋・部位だけでなく層ごとに建材名、施工年代、判定根拠を記録します。試料採取時は、どの層を含む試料か、分析で層別に扱ったかを確認します。同一建材としてまとめる場合は、外観、製品、施工時期、改修履歴等の根拠を残します。

工事側も「壁撤去」ではなく、クロス剥離、ボード切断、接着剤・パテ除去、下地解体のように作業を分解します。調査範囲と施工手順を重ねると、表面だけ調べて下地を見落とす事故を防げます。

複層建材は表面と下地を分けて判定する:比較・確認表

複層建材は表面と下地を分けて判定する:比較・確認表
部位確認する層の例見落とした場合の影響
床シート・タイル、接着剤、下地調整材剥離・研磨時に未判定層へ接触
内壁塗装・クロス、ボード、パテ、接着剤開口・撤去範囲と判定が不一致
外壁仕上塗材、下地調整材、外壁板研磨・剥離工法を誤る
天井表面材、吸音板、接着剤、裏面の吹付け・耐火材天井撤去後に未知材が露出
設備外装材、保温材、パッキン、耐火処理機器更新だけの調査で設備材を見落とす

築年・写真・データベースを正しく使う

2006年9月に石綿含有製品の製造・使用等が全面禁止されましたが、調査では完成年ではなく着工年月日を資料で確認します。増改築、改修で追加した材料、既存設備は年代を分けます。「築2006年以降」という口頭情報だけで全建材を非含有としません。

石綿含有建材データベースは、メーカー、製品名、製造時期等を調べる有力な資料ですが、全製品を網羅しません。現物の印字、型番、寸法、柄、製造時期と掲載情報が一致するかを確認し、掲載なしを非含有の根拠にはしません。

写真は調査前相談や候補箇所の共有に役立ちますが、裏面印字、下地、施工年代、触感、試料の鉱物組成までは確認できません。写真判定サービスの表示だけで切断・撤去を開始せず、資格者の書面・目視調査へつなげます。

建材を自分で削る・割る・火であぶる等の確認方法は危険です。採取が必要な場合は飛散・ばく露対策と試料管理を行える調査者へ依頼してください。

工事中に未知の建材が出たときの対応

天井を外した後の吹付け材、二重壁の下地、床材の下の古い接着剤など、着工前に見られなかった材料が露出することがあります。未知材を見つけたら、切断・撤去・乾式清掃を続けず、作業範囲を区切って調査者へ連絡します。

位置、露出した工程、すでに行った作業、粉じんの有無、写真を共有し、書面・目視・必要な分析またはみなし含有で判定します。調査結果が出るまで対象へ触れず、結果に応じて工法、保護措置、廃棄物、見積、工程、行政報告・届出を更新します。

報告書に未調査部位がある場合は、露出時の停止と連絡が事前に決まっているか確認します。未知材への対応を個々の作業者判断にせず、元請・調査者・発注者の再開承認ルートを施工計画へ入れます。

未知材を見つけたときの5手順
  1. 作業停止対象を切断・撤去・清掃しない
  2. 拡散防止立入と気流を管理し範囲を隔てる
  3. 調査者へ連絡位置・工程・写真・実施済み作業を共有
  4. 追加判定書面・目視・分析またはみなしで確定
  5. 計画更新工法・費用・工程・届出後に再開