結論:レベル3でも調査し、壊さず外す計画から始める
レベル3は一般に石綿含有成形板等を説明する呼称ですが、契約や施工計画では具体的な建材名と法令上の区分を記載します。スレート、窯業系サイディング、ビニル床タイル、石綿セメント板、けい酸カルシウム板第1種、下地調整塗材等では、形状・固定方法・作業方法が異なります。
解体・改修する部分の全材料について、工事規模にかかわらず原則として事前調査を行います。一定規模未満で行政への事前調査結果報告が不要でも、調査、結果の記録、現場への備付け・掲示、作業計画等が不要になるわけではありません。含有不明を非含有として一般工事へ流しません。
施工は原形撤去を第一に検討します。留付け具を外して板を割らずに降ろし、粉じんを抑えて梱包・搬出できる工程を作ります。やむを得ず切断・破砕する場合は、建材・工具・場所に応じた湿潤化、集じん、隔離養生、保護具、清掃を計画し、価格や工期を理由に省略しません。
- 建材を特定成形板、けい酸カルシウム板第1種、仕上塗材等を区別
- 含有を判定書面・目視・分析または含有みなし
- 原形撤去を検討留付け、搬出寸法、足場、劣化を確認
- 破断時措置湿潤化、集じん、隔離養生、保護具を選定
- 清掃・廃棄発生場所で梱包し、記録と処理を完了
対象建材を見分ける|名称・層・施工位置を記録する
成形板は、工場で板・管・タイル等に成形された材料で、屋根、外壁、軒天、内壁、天井、床、間仕切り、ダクト等に使われました。外観だけで含有を判定できないため、設計図、改修履歴、メーカー・商品名・型番・製造時期、建材データベース、現地表示を調べます。
仕上げの下には別の含有層がある場合があります。床タイルの下の接着剤、外壁仕上塗材の下地調整塗材、化粧板の裏打ち、二重張り天井、増し張り外壁を層別に記録します。一層の非含有結果を隣接層や別年代へ広げません。
同じ部屋・同じ見た目でも、改修時期、色、厚さ、留付け、メーカーが違えば別建材として調査します。工事対象図に建材番号、含有判定、根拠、撤去方法を記載し、作業者が現場で対象と非対象を識別できるようにします。
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代表例であり、製造時期や見た目だけで含有を確定しません。
| 建材の例 | 主な使用部位 | 調査上の注意 | 撤去計画の軸 |
|---|---|---|---|
| 住宅屋根用化粧スレート | 屋根 | 葺替・補修歴、重ね葺き、下葺材 | 踏抜き防止、留付け、荷下ろし |
| 窯業系サイディング・スレート波板 | 外壁、屋根 | 増し張り、塗装、シーリング、下地 | 足場、原形撤去、搬出寸法 |
| けい酸カルシウム板第1種 | 天井、壁、軒天 | 第1種か、二重張り、耐火区画 | 切断等の有無と隔離養生 |
| ビニル床タイル・接着剤 | 床 | タイルと接着剤を別層で判定 | 剥離方法、湿潤・集じん、廃棄 |
| 下地調整塗材 | 外壁下地 | 全面でなく局部施工の場合 | 仕上塗材と工法・廃水を整理 |
小規模工事でも省けない手続き|報告基準と調査義務を分ける
建築物の解体は解体部分の床面積80㎡以上、改修は請負金額100万円以上など、事前調査結果を電子報告する規模基準があります。しかし、基準未満でも工事対象部分の事前調査は原則必要です。「報告不要」を「調査不要」「対策不要」と読み替えません。
調査結果の記録を作成し、作業場所へ備え付け、概要を見やすい箇所へ掲示します。石綿含有材を扱う場合は作業計画を作り、作業者へ周知し、石綿作業主任者、特別教育、立入禁止、保護具、粉じん発散防止、清掃、記録等を確認します。
成形板だけの工事は、吹付け石綿等の特定粉じん排出等作業実施届や計画届の対象外となる場合がありますが、自治体条例が追加の届出・測定・完了報告を定める地域があります。建材、面積、工法、所在地を所管自治体と労働基準監督署へ伝えて確認します。
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表は建築物工事の基本整理です。個別案件は最新法令・告示・自治体条例で判定します。
| 項目 | 一定規模以上 | 規模基準未満 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 事前調査 | 原則必要 | 原則必要 | 工事対象部分の全材料を確認 |
| 電子報告 | 基準該当なら必要 | 国の規模基準では不要 | 工作物・船舶は別基準も確認 |
| 掲示・記録 | 必要 | 必要 | 報告の有無と分ける |
| 含有材の作業措置 | 必要 | 必要 | 工法・建材に応じて選定 |
| 自治体条例 | 追加の可能性 | 追加の可能性 | 所在地の最新制度を確認 |
原形撤去の実務|割らずに外すため施工順を変える
原形撤去とは、板や部材をできるだけ切断・破砕せずに取り外すことです。表面へ水を掛けるだけでなく、留付け具の位置、重なり、下地、部材寸法、搬出開口、足場、荷下ろしを確認し、壊さず外せる順序を計画します。先に周辺材を無理に壊す工程を避けます。
ビス・釘・フック等は、建材を破断しにくい工具と方法で外します。劣化して脆い板、塗膜で留付け位置が見えない板、接着された床材では、原形撤去が困難な場合があります。その理由と代替工法を作業計画に記録し、粉じん発散防止措置を追加します。
外した板は投下、折り曲げ、踏み割りをせず、所定の場所で包装・表示して搬出します。屋根では墜落・踏抜き、外壁では強風、室内では利用者動線・空調への拡散も管理します。石綿対策と一般の労働安全措置を別々にせず、同じ施工手順へ統合します。
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原形撤去が困難な場合は、困難な理由と切断等に伴う追加措置を計画へ残します。
| 工程 | 原形撤去の工夫 | 破損しやすい条件 | 記録 |
|---|---|---|---|
| 事前確認 | 留付け・重なり・搬出寸法を確認 | 図面なし、二重張り、劣化 | 全景、留付け、層構成 |
| 取り外し | 留付けを外し部材を支持 | 接着、さび、塗膜、狭所 | 工具、湿潤、作業写真 |
| 荷下ろし | 部材を支持し所定容器へ | 高所、長尺、強風、開口不足 | 搬出経路、破損の有無 |
| 梱包・清掃 | 発生場所で包装しHEPA等で清掃 | 仮置き、他廃材との混載 | 包装、表示、清掃、数量 |
切断・破砕が必要な場合|湿潤化と集じんを作業中も維持する
石綿等を切断等する作業では、原則として湿潤な状態にするなど粉じん発散防止措置を講じます。作業前に一度水を掛ければ終わりではなく、切断面や作業中の状態を見ながら維持します。感電、滑り、材料への浸透性、凍結など湿潤化が困難な条件は別の有効な措置を検討します。
除じん性能を有する電動工具を使う場合は、工具、フード、ホース、集じん装置、フィルター、排気、清掃を一つの系として点検します。一般の家庭用掃除機を接続しただけで適切とせず、対象粉じんへの性能、漏れ、フィルター交換、汚染した機器の扱いを確認します。
作業者は作業方法に適した呼吸用保護具と保護衣・作業衣等を使用し、装着、交換、除じん、脱衣を管理します。呼吸用保護具は面体と顔面の密着を確認し、フード付き保護衣、手袋、靴との境界から粉じんが入り込まないよう、作業計画に従って必要箇所を確実に固定します。
保護具は形状だけで判断せず、建材、作業方法、発じん、隔離条件に応じて選定し、正しい装着と退出時の除じん・脱衣まで管理します。
隔離養生が必要になる代表例|負圧隔離と混同しない
けい酸カルシウム板第1種を切断・破砕等して除去する作業では、作業場所を隔離養生し、常時湿潤な状態にする等の措置が必要です。この隔離養生は、吹付け石綿等の除去で用いる負圧隔離と同じとは限りません。建材区分と作業方法を確認します。
石綿含有仕上塗材を電気グラインダー等の電動工具で除去する場合も、隔離養生(負圧不要)と、湿潤化または除じん性能を有する電動工具等の措置が求められます。剥離剤、高圧水洗、超音波ケレン等はそれぞれ粉じん、ミスト、廃水、化学物質の条件が異なります。
隔離養生はシートを張ることだけではありません。隣接部、開口、足場、排水、廃棄物搬出を覆い、作業中の破損を点検し、内部を清掃・石綿処理してから解除します。屋外では風、雨、足場との取り合いを考え、周辺へ破片や汚泥を流出させません。
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同等以上の効果を有する措置を含む詳細条件は、令和8年2月改正マニュアルと法令で確認します。
| 作業 | 基本方向 | 隔離の考え方 | 追加確認 |
|---|---|---|---|
| 一般成形板を原形撤去 | 破断せず取り外し、必要な湿潤等 | 作業条件に応じ周辺養生 | 屋内外、利用者、破損可能性 |
| けい酸カルシウム板第1種を切断等 | 隔離養生と常時湿潤等 | 負圧不要の隔離養生 | 建材種別、工具、清掃・解除 |
| 仕上塗材を電動工具で除去 | 隔離養生と発散防止措置 | 負圧不要の隔離養生 | 集じん、剥離剤、廃水・汚泥 |
| 吹付け石綿等の除去 | 別の厳格な措置体系 | 原則、隔離・負圧・集じん排気等 | レベル3工事と同じ計画にしない |
清掃・廃棄物|割れた破片も一般廃材へ混ぜない
除去した石綿含有成形板等は、廃棄物処理法上の区分と基準に従い、他の廃棄物と混合しないよう分別します。発生場所で飛散・流出を防ぐ包装・表示を行い、保管場所、運搬経路、処分先を着工前に決めます。板を減容するため現場で破砕しません。
作業場所は破片や粉じんを見える範囲だけ掃き取るのではなく、HEPAフィルター付き真空掃除機等と湿式清掃など計画した方法で清掃します。乾式のほうき、圧縮空気、一般掃除機で粉じんを再飛散させません。足場、溝、養生、工具、搬出経路も確認します。
仕上塗材除去の汚泥、廃水、剥離剤を含む廃棄物、使い捨て保護衣・養生材は、性状と付着状況を踏まえて処理方法を確認します。マニフェストだけでなく、除去位置、梱包、保管、積込み、計量票、最終処分を工事記録へ関連付けます。
- 建材と作業工程から廃棄物区分を確認する
- 発生場所で分別・包装・表示し、破損を防ぐ
- 許可、委託契約、処分先受入条件を着工前に照合する
- 乾式清掃や現場破砕を施工計画へ入れない
- 数量、写真、計量票、マニフェストを対応させる
費用と工程|原形撤去できる条件を早く確定する
費用は面積だけでなく、板の枚数・寸法、留付け、二重張り、高所・足場、区画、電動工具、湿潤・集じん、搬出、処分、復旧で変わります。小面積でも足場や隔離養生等の固定費があり、大面積でも連続施工できれば仮設の繰返しが減る場合があります。
工期短縮には、事前調査で建材と層を確定し、搬出寸法と留付けを現地確認し、原形撤去できる施工順を組むことが有効です。着工後に別層が現れた場合は、無理に継続せず、追加調査と作業計画変更、報告・届出への影響を確認します。
見積は、調査、足場・養生、撤去、集じん、保護具、清掃、廃棄物、復旧、記録を分けます。原形撤去と切断等の双方を想定する場合は、切替条件、追加単価、承認者を定め、安価な工法へ現場判断で変更しないようにします。
成形板だから一律に安価、届出対象外だから短工期とは限りません。自治体条例、足場、施設利用、廃棄物受入を工程へ反映します。
発注・完了チェック|見積から写真台帳まで同じ建材番号で管理する
発注時は、調査報告書の建材番号を見積、施工図、作業計画、廃棄物数量へ引き継ぎます。対象を「レベル3一式」とせず、場所、建材、層、面積・枚数、含有根拠、工法、破断の有無、隔離養生、復旧を記載します。
施工中は、掲示、作業前状態、湿潤・集じん、隔離養生、保護具、原形撤去、破損時対応、梱包、清掃を工程ごとに撮影します。写真撮影のため作業を止めず危険な姿勢を取ることがないよう、撮影者と時点を計画します。
完了時は、対象建材の撤去、残存・対象外、清掃、養生解除、廃棄物、復旧を図面と照合します。成形板工事に吹付け材除去と同じ取り残し確認義務が一律適用されると断定せず、法令・工法・契約に必要な完了確認を行い、発注者へ実施状況を報告します。
- 建材名・法令区分・層・含有根拠を記載したか
- 原形撤去の可否と困難な理由を確認したか
- 切断等、けい酸カルシウム板第1種、仕上塗材の追加措置を判定したか
- 作業別の保護具・隔離・湿潤・集じんを計画したか
- 廃棄物の区分、許可、処分先、梱包を確定したか
- 施工・清掃・廃棄・復旧の記録を受領したか
