最初に資産台帳を3区分する

名称が『設備』でも法令上の扱いが同じとは限りません。固定状況、用途、構造、工事内容を整理し、建築物石綿含有建材調査者と工作物石綿事前調査者等の担当範囲を決めます。

最初に資産台帳を3区分する:比較・確認表

最初に資産台帳を3区分する:比較・確認表
区分代表例主な確認
建築物工場建屋、倉庫、事務所、建築設備天井・壁・屋根・耐火材・空調等
工作物炉、ボイラー、煙突、反応槽、配管設備等対象工作物の種類と調査者要件
機械・工業製品ガスケット、ブレーキ、電気絶縁材等メーカー資料、交換・廃棄時のばく露対策

2026年1月から工作物も資格者調査が本格化

令和8年1月1日以降に着工する一定の工作物の解体・改修では、工作物石綿事前調査者等の要件を満たす者による調査が必要です。対象工作物の種類により、必要な知識・経験を持つ者の範囲が異なります。

建屋の有資格者が設備全体も自動的に調査できると考えず、実際に現地へ来る担当者の資格と対象範囲を確認します。建築物と工作物にまたがる工事は、報告書と図面の境界を接続します。

複合工事の調査体制
  1. 工事統括全体範囲・工程・報告を統合
  2. 建築物調査者建屋・建築設備を調査
  3. 工作物調査者等炉・煙突・設備等を調査
  4. 分析機関試料番号と方法を管理
  5. 設備管理者運転・履歴・停止条件を提供

設備材は直管だけでなく継手を見る

配管保温材は直管部、エルボ、バルブ、フランジで材料が異なる場合があります。ガスケット、パッキン、耐熱布、断熱材、耐火材、シール材等を設備図と現物で確認します。

過去の部分更新で、新旧部材が混在しやすいのも工場の特徴です。交換年、メーカー、予備品、保全記録、設備番号を調査台帳へ取り込みます。

設備材は直管だけでなく継手を見る:比較・確認表

設備材は直管だけでなく継手を見る:比較・確認表
設備主な確認部位履歴資料
配管保温材、エルボ、フランジ、ガスケット配管系統図、保全記録
炉・ボイラー断熱材、耐火材、シール、煙道仕様書、補修履歴
煙突断熱材、ライニング、接続部断面図、改修記録
受変電・機械絶縁材、ブレーキ、パッキンメーカー資料、部品表

停止・冷却・洗浄条件を調査工程へ入れる

高温、高圧、薬品、可燃物、酸欠、狭所がある設備は、通常の建物調査と同じ手順では入れません。設備停止、ロックアウト、冷却、残留物除去、ガス測定、作業許可を設備管理者と決めます。

調査のために無理な開放をせず、定期停止や保全工事と合わせます。確認できない内部は未調査として位置・理由・開放後の追加調査手順を残します。

停止中の工場設備で配管保温材とフランジを確認する調査者
工場調査は設備停止・安全許可と一体で計画し、直管・継手・旧補修部を分けて確認します。

生産停止リスクを減らす工程設計

  • 定期修繕前に資料調査と外観確認を終える
  • 停止中にしか見られない箇所を優先一覧化する
  • 追加採取の承認者と分析納期を決める
  • 含有時の代替工法・仮復旧・予備品を検討する
  • 作業区域と稼働区域の空調・動線を分ける
  • 再稼働条件に清掃・復旧・記録承認を入れる

設備台帳へ残す項目

  • 設備番号・系統・位置・用途
  • 建材・部品名、含有判定、根拠
  • 採取位置と分析結果
  • 未調査内部と開放時の条件
  • 除去・交換・封じ込めの履歴
  • 次回停止時に確認する項目

工作物の種類と調査資格を工事前に照合する

石綿障害予防規則では、建築物、工作物、鋼製船舶の解体・改修を行うとき、作業部分について石綿等の使用の有無を事前に調べることが基本です。令和8年1月1日以降に着工する工作物工事では、対象工作物に応じた要件を満たす者による事前調査が必要になりました。単に『工場の建築物調査者資格を持つ』というだけで、すべての設備を担当できるとは限りません。

厚生労働省の工作物石綿事前調査者ページは、煙突、ボイラー、反応槽、発電設備、焼却設備、配管等を工作物の例として示し、対象工作物ごとに調査できる者を整理しています。エレベーターを例にすると、かご等は工作物、昇降路の壁面は建築物とされます。このように同じ工区の中でも対象物の区分が変わるため、設備名だけで一括判断しません。

発注時は、工作物一覧、設置場所、工事内容、着工日を調査会社へ提示し、誰がどの資格・経歴により調査するかを名簿にします。建築物と工作物の境界、調査者同士の情報受渡し、最終報告書を統合する責任者まで決めると、未調査の取り合い部を減らせます。

区分は呼び名ではなく、対象物の構造・設置状況と実際の工事範囲で確認します。

区分は呼び名ではなく、対象物の構造・設置状況と実際の工事範囲で確認します。
確認対象区分を決める手掛かり発注時に確認すること
建屋・昇降路壁・天井建築物を構成する部位か建築物調査者の資格と調査範囲
ボイラー・炉・煙突・反応槽工作物として設置された設備か対象工作物に対応できる調査者
接続配管・煙道・保温系統どの設備に接続し何を改修するか系統の始点・終点と取り合い
交換部品・予備品解体等の対象となる工作物か製品管理かメーカー資料と交換作業時の対策

停止できる範囲から調査計画を組み立てる

工場調査は、現地確認より先に操業条件を整理します。運転中に接近できない高温部、高圧・薬液が残る系統、酸欠のおそれがある槽内、可動部、活線部は、調査の都合だけで開放できません。設備管理者が安全に停止・隔離できる範囲と、定期修繕まで確認できない範囲を分けます。

書面調査では、竣工図だけでなく、P&IDや配管系統図、設備仕様書、保温仕様、部品表、メーカー回答、定期修繕の写真、交換履歴を設備番号で結び付けます。同型設備でも補修時期や納入ロットが異なれば同じ材料とは限らないため、代表性を確認せず横展開しません。

現地では、稼働区域と調査区域の動線、立入許可、鍵、足場、照明、表面温度、残留物、採取後の復旧方法をチェックします。確認不能部を空欄にせず、未調査の位置、理由、石綿含有とみなして施工するか、次回停止時に追加調査するかを報告書へ残します。

操業を止めすぎない調査の組み方
  1. 資料先行設備番号と履歴から候補部位を絞る
  2. 安全条件確認停止・冷却・隔離・立入許可を決める
  3. 稼働中確認安全に見られる外観と表示を記録
  4. 停止時確認内部・継手・旧補修部を重点確認
  5. 未調査管理みなし施工か追加調査の条件を残す

試料採取は系統と改修履歴の違いを反映する

試料数は設備一式につき一検体と機械的に決めるものではありません。直管とエルボ、バルブ周辺、フランジパッキン、旧補修部、新旧保温材など、材質や施工時期が異なる単位を分けます。表面だけが同じでも、内側の断熱層や下地が別材料の場合があるため、作業で触れる全層を確認します。

採取位置は、分析結果がどの設備・系統・範囲を代表するか後から追跡できるよう、設備番号、系統、階、方向、部位、写真番号を記録します。熱、薬品、圧力、狭所等の危険が残る場所は採取を強行せず、安全な停止条件を整えるか、みなし含有を含む代替判断を調査者と決めます。

分析結果が非含有でも、その結果を未確認の別系統や別年代の補修部へ拡張できるとは限りません。調査報告書には判定範囲と除外範囲を図示し、施工者は撤去順序と照合します。工事中に異なる層や未記録のガスケットが現れた場合は、その部位の作業を止めて追加判定します。

試料採取は系統と改修履歴の違いを反映する:比較・確認表

試料採取は系統と改修履歴の違いを反映する:比較・確認表
差が生じやすい単位分けて見る理由記録する識別情報
直管とエルボ施工材・補修材が異なることがある系統番号、径、方向
本体とフランジ保温材とガスケットは別材料設備番号、継手番号
旧設部と更新部交換年・メーカーが異なる施工年、部品表、写真
外装と内部断熱層表面から内部材を断定できない層構成、採取深さ、復旧方法

報告・届出・施工への引継ぎを一つの台帳で管理する

事前調査は工場台帳を作って終わりではありません。一定規模の工事は石綿事前調査結果報告システムの対象となり、工作物では厚生労働大臣が定める対象工作物の解体・改修で請負金額が税込100万円以上の場合が報告対象です。一方、100万円未満なら事前調査自体が不要になるわけではありません。

施工前には、調査範囲図、含有・非含有・みなし・未調査の区分、作業方法、設備停止条件、関係者の立入範囲を工事許可書とつなぎます。除去等が必要な場合は、建材の種類と作業内容に応じて隔離、湿潤化、集じん排気、呼吸用保護具、作業計画、届出等の要否を個別に確認します。

完了後は、撤去・交換した範囲だけを台帳から消すのではなく、残存部、分析結果、廃棄物記録、復旧材、写真、次回開放時の注意を更新します。設備保全部門と建物管理部門が別組織でも同じ版の位置図を参照できるよう、改訂日と承認者を付けて保管します。

  • 報告対象規模と工事範囲を着工前に確認する
  • 資格者名と担当した対象物を記録する
  • 未調査部位は位置と再確認条件を明記する
  • 工事許可書へ含有情報と停止条件を添付する
  • 撤去後も残存部と廃棄記録を台帳更新する